くらしに寄り添う「木曽漆器」

長野県塩尻周辺の木曽谷は、
日本を代表する木材として名高い木曽ヒノキの産地であり、
古くから漆器の生産地としても有名です。
木曽平沢地区は、漆塗りの下地に適した良質の錆土(さびつち)が
産出したことから漆器の一大産地として発展し、
木曽漆器の名は全国に知られるようになりました。

うるわしの漆塗り

うるしの器はしっとりとした風合いや保湿性に優れ、陶磁器よりも熱の伝導がゆっくりで、食器の実用性として大変優れています。熱々でのお汁でも、お椀を持った手には丁度いい温かさ。かつては普段の食事に使われていた漆器。日々使い込んでいくことで、味わいが出てしっとりと馴染んできます。 うるしは「うるおう」と言われています。漆の艶や塗り肌を表現したものでしょう。日本の永い歴史の中で漆が愛され続けられたことが言葉の中に残されています。

歴史を紡ぐ「ひのき箸」

面積の約9割を森林が占める木曽谷。

戦後満州開拓団から戻った人々が、
ヒノキの伐採跡に残された切り株をナタで割り、
生活の手段として作り始めたのがこのひのき箸です。
現在は機械で作られていますが、

手仕事のような丁寧な仕上がりの木地に、
手作業で生漆を塗り布などで拭き取る「拭き漆」を施しています。
ひのきの木地と漆という現代では少し贅沢なものづくりでありながら、
軽くて手に馴染む日常使いのお箸です。